日本には「1月、2月、3月…12月」という西洋式の月の呼び方に加え、「睦月、如月、弥生…師走」という独特の呼び名が存在します。
これらの名前は月の異名として古くから用いられ、それぞれに深い意味と由来があります。
この記事では、睦月から師走までの各月の異名について、その背景を詳しく解説します。
日本の月の異名とその起源
日本の月の異名は、古文書「万葉集」や「日本書紀」にも登場するほど古くから親しまれています。
これらの名前は、明治5年(1872年)以前に主に使われていた旧暦(太陰太陽暦)に基づいています。
旧暦は月の満ち欠けを基準にした暦であり、新暦(グレゴリオ暦)と比べると季節感に少しズレがあることが特徴です。
異名の意味と季節のズレ
たとえば、「睦月」は旧暦の1月にあたりますが、新暦では1月下旬から2月下旬に相当します。
このように、旧暦の月名と新暦の月とでは、実際の季節感にズレがあるため、それを理解することが大切です。
この季節のズレは年によって異なり、旧暦の各月が新暦でどの時期にあたるかは変動します。
この記事を通して、日本の伝統的な月の呼び名が持つ文化的背景や、それぞれの月がどのような意味を持つのかを深く理解することができるでしょう。
各月のについて紹介
それでは、各月について紹介していきます。
睦月、如月、弥生、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走それぞれの項目を簡単にお伝えしますので、詳細は各記事のリンクからご確認ください。
睦月(むつき・1月)
睦月という名前は、お正月に家族や親戚が和やかに過ごす様子から「睦び月(むつびつき)」と呼ばれていたものが短縮されたものです。
また、「始まる月」や「元になる月」として「もとつき」とも呼ばれ、さらには「実月(むつき)」として、稲の実を水に浸す月であることが由来とされています。
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如月(きさらぎ・2月)
如月の名前の由来には、重ね着を意味する「衣更着」が由来とする説があり、「寒さが厳しく重ね着をする季節」とされています。
その他、「気更来」や「息更来」といった、天気が良くなり陽気が増すこと、または「生更木」のように、春に向かって草木が生え始めることが由来とされることもあります。
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弥生(やよい・3月)
「弥生」の名前は「いやおい」から「やよい」と変化したとされています。
この「弥」は「ますます」を意味し、「生」は草木が生い茂ることを示しており、冬の終わりと共に生命が息吹き始める季節を象徴しています。
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卯月(うづき・4月)
卯月は卯の花が咲く季節を指す「卯の花の月」から名付けられたとされるのが一般的です。
その他に「う」が「初」「産」という意味を持ち、年の始まりや新しい生命の誕生を象徴する月として「植月」が転じて「卯月」となったとも言われています。
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皐月(さつき・5月)
皐月という名前は、「早苗月(さなえづき)」が由来で、これは苗を植える作業を指す言葉でした。
この言葉が時代と共に短縮され「さつき」となったとされています。また、「さ(佐)」という耕作を意味する古語から来ており、稲作の月を意味する「さつき」に変化したとも言われています。
漢字の「皐」には「神に捧げる稲」という意味が含まれています。
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水無月(みなづき・6月)
水無月の名称は、梅雨明けとともに田んぼに水が満ちる様子からつけられました。「無」という文字はここでは「ない」ではなく「の」と解釈され、「水の月」という意味になります。
また、梅雨が明けて水が減ることからも「水無月」と呼ばれるようになりました。
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文月(ふづき・7月)
文月は七夕の時期に短冊に願い事を書く習慣から名付けられました。「文月」という名前は、この習慣を反映しています。
他にも、この時期に稲穂が膨らむ様子を指す「穂含月(ほふみづき)」や「含月(ふくみづき)」とも呼ばれ、これらが転じて「文月」となりました。
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葉月(はづき・8月)
葉月は「葉が落ちる月」として知られ、「葉落ち月」が略されて「葉月」となったという説が有力です。
また、この時期に稲穂が盛んに張ることから「穂張り月」と呼ばれ、これが「張り月」を経て「葉月」に転じたとも言われています。
さらに、北方から渡来する雁の初来を示す「初来月(はつきづき)」が変化したとも考えられています。
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長月(ながつき・9月)
長月は「夜長月(よながつき)」として、秋の夜が長くなることから名付けられました。
また、この時期に降る長雨や、稲刈りの時期であることから「長雨月(ながめつき)」や「稲刈月(いなかりづき)」とも呼ばれ、これらが略されたという説もあります。
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神無月(かんなづき・10月)
神無月は「神の月」として解釈されることが一般的で、「無」は「ない」ではなく「の」という意味で使われています。
これは神々が存在する月という意味を持っています。
また、この月に雷が鳴らないことから「雷無月(かみなしづき)」とも呼ばれ、その名が「神無月」へと変わったとされています。
新米でお酒を醸造する時期であることから「醸成月(かみなしづき)」という名も古くからあります。
一方で、島根県では全国の神々が出雲大社に集まるため、その地域では「神有月」または「神在月(かみありづき)」とも呼ばれています。
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霜月(しもつき・11月)
霜月という名前は、この月に霜が降り始めることから来ています。
元々「霜降り月」と呼ばれていた名前が短縮され、「霜月」として定着しました。
11月は気温が下がり、霜が頻繁に見られる季節で、この名前が季節の変化を色濃く反映しています。
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師走(しわす・12月)
師走は年末の忙しさを象徴する名前で、僧侶や教師などの「師」がこの時期に忙しく走り回ることから名付けられました。
また、万葉集や日本書紀において「十二月」を「しわす」と読む例があり、これが「師走」という当て字で表現されるようになったとされています。
さらに、「年果つ(としはつ)」が転訛して「しわす」となったという説もあります。
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日本の月の異名とその魅力について
日本では各月に異名がつけられていますが、これらの起源や意味の多くははっきりと記録されていないため、その由来は不明な点が多いです。
これにより、月の異名には様々な解釈が存在し、それぞれがその月特有の季節感や自然の変化を表現しようとする試みの結果と言えます。
これらの異名は、たった二文字や三文字でその月の季節の雰囲気を簡潔に、かつ美しく伝えるものであり、それぞれの名前が持つ独特の響きや意味が日本の四季の移ろいを感じさせてくれます。
このように、月の異名は日本の四季を色濃く映し出す魅力的な文化的要素となっています。
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